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高齢者の就業状況について、「高年齢者就業実態調査」(1992年労働省)をみると、60〜69歳では男女とも就業者は増えており、男の場合、就業者の割合は、60〜64歳で71.6%、65〜69歳で58.6%であり、不就業者であっても60〜64歳の不就業者(28.4%)のうち5割以上、65〜69歳(41.4%)の4割が就業を希望している。女の場合、就業者の割合は、60〜64歳で39.8%、65〜69歳で32.1%であり、不就業者の60〜64歳(60.2%)のうち3分の1が、65〜69歳(67.9%)のうち4分の1が就業を希望している(表2−3−7)。

 

表2−3−7 高齢者の就業・不就業状況

(%)

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資料:1992年「高年齢者就業実態調査」(労働省)

 

わが国の高齢者の就労意欲の高さは欧米とは比べようもなく高いのが実態であるが、これは最近の調査研究(「東アジア高齢化社会研究」シリーズ:エイジング総合研究センター)でも、「働くこと」を「使役」と考えず、むしろ「健康や生きがい」と考える東アジア特有の志向が社会意識として根強くあることが証明されている。こうした思想は長い歴史文化によって形成されたもので、生活の欧米化や国際化が進む今後においても容易に変わりえない意識とみなされている。
急増する健康な高齢人口が経済的活動に参加することは、今後の高齢化の進行に伴う社会経済にとって極めて重要かつ不可欠と考えられているが、現在の不就業者の状況をみると、社会に高齢者に適した就業の場が少ないことが問題となっている。しかし、今後わが国においては、福祉産業の発展をはじめ人間関係やインフォームド・コンセントが求められる人間性ある仕事が随所に拡大してゆくことは明らかで、したがって、今後は人生経験のある中高年層が多様な社会分野で様々な業務形態で就労してゆくものと考えられる。

 

 

 

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